高橋 信 一覧

田んぼの学校1月 冬鳥調査

◆実施日 2006年1月8日(日)9:30~12:00
◆参加者 約30名

大雪の中、結構な人数が集まってくれました。野外観察に出る前に、今シーズンの豊岡盆地の冬鳥の様子をホームページのコンテンツを使って説明しました。
(1)秋以降、水を張った田んぼが増えたこともあり、コハクチョウの飛来が目立っている。
(2)年末の六方川にマガン2、コハクチョウ3が飛来した。
(3)山の冬鳥が里に下りてこない状態が続いている。山に餌が豊富、里は雪に覆われて餌がない。
(4)円山川の河川工事の影響で猛禽類が居つかない。
(5)放鳥コウノトリは郷公園の給餌に頼って暮らしている。


駄坂地区の六方川に向かい、橋の上から3羽のコハクチョウを観察しました。マガモ、コガモ、カルガモ、ヒドリガモもいました。大勢で観察したのでコハクチョウがびっくりして川から飛び立ちましたが、おかげでコハクチョウが飛ぶ姿を見ることができました。

郷公園に戻り、東公開ケージまで歩きました。途中、山際でジョウビタキのオスを観察。観察棟からケージ内にいる放鳥コウノトリをスコープを使って観察しました。アオサギ、ダイサギもいました。
放鳥コウノトリは背中のアンテナを見ればすぐに分かります。足輪の色がそれぞれで違うので、双眼鏡やスコープで読み取れば個体識別が出来ます。パークボランティアのKさんに現場で解説してもらいました。


文化館に戻り、今日観察できた鳥を写真を使って復習したあと、ちょうど出来上がった大鍋で暖まり解散しました。雪の中でしたが、コハクチョウをはじめ、20種類の鳥が観察できてまずまずの観察会になったと思います。
観察できた鳥のリスト(クリックで写真が出ます)
 1.コハクチョウ
 2.マガモ
 3.カルガモ
 4.ヒドリガモ
 5.コガモ
 6.タシギ
 7.イカルチドリ
 8.セグロセキレイ
 9.ダイサギ
10.コサギ
11.アオサギ
12.ケリ
13.キジバト
14.ツグミ
15.ジョウビタキ
16.ヒヨドリ
17.ホオジロ
18.スズメ
19.トビ
20.コウノトリ

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タゲリ

帰って来た六方田んぼのシンボル

タゲリ(チドリ目チドリ科)
 台風23号の大洪水で泥の海と化した六方田んぼ。今も耕作できない農地が残っているが、1年経って多くの田んぼは元気を取り戻した感がある。
 豊岡盆地には毎年10月の終わりに群れで飛来し、田んぼで虫を採りながら冬を越すタゲリ。冬の六方田んぼのシンボルとして、野鳥ファンには古くから愛されてきたチドリだ。このタゲリの姿を、昨冬はほとんど見ることができなかった。
 秋晴れの円山川堤防、上空を3羽のタゲリが北に向かって飛んだ。ひょっとして六方田んぼに下りているかも知れない。そう思いながら、最近になって水が張られた田んぼの一画に向かった。
 年間を通して水を張り休耕田をビオトープ化する試みが、豊岡盆地ではすでに始まっている。コウノトリの試験放鳥を受け、冬の田んぼに水を張る「冬季湛水田」も今年から本格的に行われる。六方田んぼでも大きな面積で水が張られ、秋以降の田んぼの風景が変わろうとしている。
 そんな湛水田に予想通りタゲリの群れを見つけた。2年ぶりに帰って来たタゲリの群れは、畦で眠っているもの、水浴びをするもの、しきりに餌を採っているもの、全部で18羽を数えた。アンテナのようにピンと立てた冠羽と、光によって微妙に光沢が変化する深緑の羽根が美しい。
 突然「ミュー」とネコのような鳴き声を上げたかと思うと、群れは一斉に舞い上がって北方向に飛んで行った。近くで飛ばしはじめたラジコン飛行機に驚いたのだ。田んぼを南北に貫く農道はひっきりなしに車が通過する。人の生活と隣り合いながらも、野生はしたたかにここで生きてゆく。放鳥コウノトリもきっとそうであってほしい。
文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信
※2005/11/13掲載


さわやか環境まつり(但馬まるごと感動市)


但馬ドームのイベントで出店。菅村副代表は土・日の二日間詰めてもらいました。ご苦労様でした。

客層がかなり場違いな感じで、売り上げも予定の半分ほどで終わりました。


コウノトリ写真コンクール

 
コウノトリファンクラブ主催の写真コンクールの案内です。2月末締切。賞金10万円。
人と自然の共生というテーマをコウノトリの姿を通して表現してください。


田んぼの学校05/10/9 赤とんぼ調査

「田んぼの学校・アカトンボ調査」
日時:10月9日(日)9:30~コウノピア
コウノトリが空を舞う里地で行うアカトンボ調査なんて、ほんとうに贅沢な調査でし
た。今日は良く飛んでくれたし、人工巣塔にも2羽で仲良く入っていました。鍋はサ
メとカニの組み合わせ。これも贅沢でした。
 
<アカトンボ調査>参加者50名
最初はアカトンボの姿がほとんど見られず心配しました。夜も雨が降っていたような
ので、その影響もあったのでしょうが、日差しがでてからも少なかったですね。コウ
ノトリ文化館のみなさんの情報では数日前からアカトンボの大群がこの谷で見られて
いるとのことで、安心していたのですが、さらに下流の田んぼの方に分散していった
のかも知れません。
 
参加者の方は、スタッフを含めて50人。運動会やいろいろな行事と重なった割には
たくさん来ていただき、今年の調査を実施することができました。文化館の周辺でま
ず採集し、川に沿って東の谷のビオトープへ。そこでしばらく採集し最後は田んぼ道
で採集しました。東の谷のビオトープ周辺は、池や山際の湿地、水路など多様な環境
が形成されていて、アキアカネ、ナツアカネ、ノシメトンボ以外にキトンボ、ネキト
ンボ、マユタテアカネが見られました。田んぼでは、稲刈り後の水がたまったわずか
な場所にアカトンボが集中していました。かつては、田んぼ全面でこのような光景が
見られ、無数のアカトンボが産卵していました。
 
但馬では約15種類のアカトンボが見られますが、アカトンボの種類や個体数で環境
の多様性を感じ取ることができると思います。また、田んぼでは、水田のありようが
アカトンボの種類と数に反映されるので、これも面白いと思います。
<調査結果>
アキアカネ  142匹
ノシメトンボ  38匹
ナツアカネ   25匹
ネキトンボ    2匹
マユタテアカネ  1匹
キトンボ     1匹
合計     209匹
50人(網は30)で調査した割りには採集個体数が少なかった。ノシメトンボの割
合は例年こんなものだろう。ナツアカネの割合も高いが、田んぼ部分ではもっと少な
くなるだろう。キトンボは羽がオレンジ色のとても美しい、赤くならないアカトンボ
で、環境が良好な沼のトンボというイメージがある。ネキトンボは但馬地方ではもと
もと少ないトンボで、近年増えてきたように思う。案外どこにでも現れるトンボのよ
うだ。マユタテアカネは山に行けばたくさんいるが田んぼには出てこない。
 
コウノトリの郷公園の中のビオトープで6種類、池が少ないので種類も少ないのは無
理もないが、このアカトンボ調査でキトンボやネキトンボが見られたのは収穫だった。
アキアカネは水を張った池より、田んぼの稲刈り後のくぼ地の水溜りのようなところ
に産卵している。ノシメトンボは池の干潟部分や水のない田んぼに産卵するというが、
産卵現場をもう少し観察してみたい。
そのほかにアカトンボではないが、オニヤンマ、シオカラトンボ、オオシオカラトン
ボ、イトトンボ類が見られた。
      コウノトリ市民研究所
      主任研究員(昆虫担当)上田尚志 (写真:高橋 信)


秋のノビタキ


この「但馬の野鳥」の記事も久しぶりである。春のノビタキを書いて以来だ。季節は巡り、北で繁殖を終えたノビタキが南に移動する季節になった。豊岡盆地での今秋のノビタキ初認日は9月23日。一週間経って田んぼのあちこちでノビタキの姿を見かけるようになった。
南に向かうノビタキがやってくると、豊岡盆地もいよいよ秋を迎える。ノビタキが止まるセイタカアワダチソウはやがて黄色く色づき、ススキは白い穂を垂らすようになって、秋の深まりとともにいつしかノビタキの姿もひっそり消えてゆく。
撮影:2005/10/01 豊岡市赤石


ヤマセミ

ただいま渓流漁見習い中

ヤマセミ(Greater Pied Kingfisher)
ブッポウソウ目カワセミ科 Ceryle lugubris
 カワセミはすっかりおなじみだが、同じ仲間のヤマセミはそう簡単に見つかる鳥ではない。この鳥の姿や生態をすぐにイメージできる人は、きっと自然系に興味のある人に違いない。
 カワセミが「川」ならヤマセミは「山」という生活区分の連想は間違いではない。しかしヤマセミは意外にも大きな河川の中流域でも見られる鳥だ。渓流の鳥という先入観に固執しないほうがよい。
 カヌーで川下りすると、静かな淵の上にかかる枝からハト大の白い鳥が下流に向かって飛び立つ。私のヤマセミとの出会いは大概がカヌーの上からである。地上から近づける場所でヤマセミを観察するのはなかなか難しいのである。
 私がヤマセミの写真を初めて撮ったのは6年前。カヌーで見つけたポイントに何度も通いつめて、ようやく川向こうに現われたときは感動した。その翌年も別のポイントで撮影し、それを最後にヤマセミ写真とは縁遠くなった。
 先月初めのことだ。谷道を遡りながらヤマセミとすれ違った。車から降りて捜索すると、堰堤の前後で数羽のヤマセミを観察できた。堰堤の深みでしきりにダイビングを繰り返す2羽は巣立ったばかりの幼鳥。観察中魚取りには一度も成功しなかったが、すぐにも一人で生き抜くための力を身に付けるだろう。
 ヤマセミは非常に警戒心の強い鳥で撮影が難しいが、ここの幼鳥はとても友好的だった。堰堤下のネムノキの木陰で休憩するヤマセミのやんちゃ坊主に、レンズ越しに「頑張れよ」とエールを送った。
文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信
※2005年8月28日掲載


アオバズク

鎮守の杜は最後の聖域

アオバズク(フクロウ目フクロウ科)
 高校生だった頃、青葉が茂る季節になると日が落ちた校舎の裏山からはアオバズクの「ホッホ・ホッツホ」という鳴き声が聞こえてきた。その声はフクロウの「ゴロスケ・ホッホ」に比べ、ずいぶん明るく軽やかなものだった。
 アオバズクはハトより一回り小さいフクロウの仲間で、繁殖のために南から渡ってくる夏鳥。近年すっかり数を減らしてしまったのは、餌となる昆虫が少なくなってしまったのが原因といわれている。
 アオバズク最後の聖域は鎮守の杜。ケヤキなどの古木にあいたウロに彼らは巣を作る。気に入った巣穴は何年も使われるから、繁殖の妨げになるようなことが起こらない限り、同じ場所で毎年彼らと出会うチャンスがある。
 そのアオバズクの姿を神社杜で初めて見ることができた。アオバズクは昼間はお気に入りの枝に止まって眠っていることが多い。警戒心は強くなく、静かに観察する限り逃げ出すことがない。今回最初の出会いは、神社入口の常緑樹の枝の中。すでに鳥仲間二人が観察中のところだった。相手との距離は8m。黄色い大きな目をキッと見開いて、こちらの様子を常にうかがっている。
 さすがに相手も根負けしたのか、やがて地上低く飛び出してからケヤキの高い枝に上がってしまった。飛んだときのアオバズクの翼は思った以上に長いもので、その飛翔姿は小型のタカと見間違えるほどだった。
 高い枝から我々を見下ろすアオバズク。その表情はとても豊かで、スコープ越しの観察は見飽きることがない。ときにまん丸、ときにアーモンド型、ときに伏目にと、黄色い虹彩に大きな瞳の目が形を変える。古くからフクロウは知恵の象徴とされてきたが、アオバズクの目で睨まれると心の奥底まで覗かれてしまうような、そんな気分になってしまう。鎮守の森に似つかわしい鳥である。
文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信
※2005/6/28(火)掲載


コチドリ

「コチドリ踊り」の春

コチドリ(Little Ringed Plover) チドリ目チドリ科 Charadrius dubius curonicus
 コチドリは夏鳥で、3月も終わりに近づくといち早く豊岡盆地に戻ってくる。渡って来たときにはすでに「つがい」が形成されており、すぐにも繁殖活動を始める。
 コチドリが繁殖地として選ぶのは、丸石河原や農地の砂利道とかである。彼らは地面に直接巣を作る。樹上に巣を掛ける鳥のように、植物などを使って巣を編むということはしない。直径10センチほどの円形のくぼみを地面に作り、産座には細かい砂利が敷いてあるだけの粗末な巣である。
 繁殖期に日ごと繰り返されるコチドリの行動は非常におもしろい。オスは地面に胸をこすりつけ、尾羽を高く上げる。ビュルビュルと小さく鳴きながら、扇状に広げた尾羽を左右に振る。メスの気を引くためのこの求愛ディスプレイは、場所を変えながらメスの気持ちが高まるまで何度も繰り返される。
 やがてメスがその気になったとき、いよいよ「コチドリ踊り」が始まるのであるが、これがなかなか美しく情熱的なのだ。高まったメスはオスが最後にディスプレイしたくぼみに体を入れ、静かにそのときを待つ。メスに気に入られたオスはもう嬉しくてたまらない。片方の翼を広げ、それを傘のようにメスの上におおい被せながら、ビュルビュルと鳴いてメスの周りを踊るように歩くのである。
 さて「コチドリ踊り」の後は感極まって交尾にいたるわけだが、メスはすぐに4個の小さな卵を産む。オス・メス交替で抱卵し、20日ちょっとでヒナが孵る。もっとも、ヒナが孵るまでに巣が破壊されたり、卵を天敵に食べられたり、彼らの繁殖には大きなリスクがつきものだ。
 写真のペアがかつて営巣した農地は、大規模な圃場整備を受けた。ここでの繁殖はしばらく無理だろうが、そんなことは野生の世界では「想定内」。今日もどこかで「コチドリ踊り」が繰り返され、人知れず新しい命が生まれてゆくのである。
(文と写真:NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋信)
※2005/4/26掲載


カタクリ


希少な植物の自生地は公言されないことが多い。ましてやそれが可憐な花をつけるとなればなおさらである。ラン科の植物は野生植物の中で最も不運な存在で、場所が知られるとあっというまに盗掘されて自然界から姿を消してしまう。野の花を掘り取って自宅の庭なり鉢なりに育てて楽しむ人の気持ちは分からなくもないが、野の花は野にあってこそ美しいとは思わないか。
カタクリは里山の代表的な植物で、かつてはどこにでもあった。その根からとった良質な澱粉が片栗粉であるが、今では片栗の名前だけ残って粉は馬鈴薯から作られる。めっきり自生地が減少してしまったカタクリは、もっぱら山野草ファンの花鑑賞の対象となっている。
但馬の代表的なカタクリ自生地として知られる三川山(標高888m)にも、花期になると人が集まる。ただし大規模な自生地は標高500mの中腹に位置し、そこに到るには厳しい山道を辿らねばならないので、ここのカタクリは山歩きを趣味にする人たちにもっぱら愛されている。自生地はまったくの自然の状態であり、常に自然の撹乱を受けつづけている。それは雪崩であったり、山崩れであったり、毎年少しずつ地形を変えながら、そのたびに押し流された土砂がカタクリの植生分布を広げてきた。
数年前、ここで大規模な盗掘事件があったという。素人レベルの仕事ではなく、業者が商売のためにカタクリの株をごっそり持って帰ったという噂だった。かなり深刻な状況として話が伝わってきたので心配したが、翌年には何事もなかったかのように沢山の花を咲かせて安心した。
カタクリの花は、うつむきかげんの薄桃色の花弁のしおらしさと、剥き出しのシベの生々しさと、そのアンバランスが同居した美しさが魅力だ。カタクリは森の眠りを呼び覚まし、その短い花の時期を虫たちに捧げて実をつける。その実が土に落ちて花を咲かせるまで7年かかるという。そう思えば、この花の愛しさもまた募るというものだ。
ユリ科カタクリ属 多年草 Erythronium japonicum
撮影:2005/4/16 三川山


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