但馬の蜘蛛類 一覧

モエギザトウムシ


モエギザトウムシ 節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目マザトウムシ科カワザトウムシ亜科
(Leiobunum japonicum)
萌黄座頭虫

モエギザトウムシ、比較的小型のザトウムシで、豆粒のような胴体。体長は3~4mm程度。歩脚はザトウムシの中でも相対的に長い。人手のはいった雑木林や林縁などに多い種で、但馬の里山ではもっとも普通に見られる種だと思う。

6月ごろ小さな幼体が見られ、8月上旬ぐらいから成体になる。同時に複数個体を見かけることが多い。本種は通常,背に棘はないが,まれに棘がある。

「モエギ」とは、おそらく「萌黄」つまり、「新緑の明るい緑色」から来ている。実際は爽やかな新緑の色とはかなり違う場合が多い。黄土~深緑、黒褐色のメタリックな感じの背中の色が特徴といえよう。小さくて分かりにくいが、見方によるとなかなか美しい。

歩脚の関節の近くの色が白っぽいので、胴体と共にこの脚の模様も結構目立つ。

モエギザトウムシ。小さなメタリックな胴体を長い脚で支え、体を揺らせ、SF的に森の地面や樹幹を闊歩している。主として肉食、虫の死骸などを食べるらしい。


アカサビザトウムシ


アカサビザトウムシ 節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目カワザトウムシ科フシザトウムシ亜科
(Gagrellula ferruginea (Loman,1902))
赤錆座頭虫

 森林生活者であるザトウムシ。移動能力が乏しいので、同一種でも地域的な分化が著しいグループである。

鳥取大学の鶴崎先生の資料では、但馬は地理的分化の集中度が非常に高い地域となっている。今回のアカサビザトウムシは、染色体数が2n=14~20まで多様に分化している。

 アカサビザトウムシ、体長4~6mm程度。背中に一本の棘が生えている。卵越冬で、成体は7月~10月まで見られる。
ザトウムシを見かけたら、背中に棘があるかどうかを見てほしい。なかなかカッコいい。

但馬地域で棘を持っているザトウムシは3種類確認されている。その場所が海岸部であればヒトハリザトウムシ、比較的大きく黒ければオオナガザトウムシ、そうでなければアカサビザトウムシということになる。

撮影場所:豊岡市妙楽寺、豊岡市日高町阿瀬渓谷


オオナガザトウムシ


オオナガザトウムシ 節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目カワザトウムシ科フシザトウムシ亜科
(Melanopa grandis Roewer)
大長座頭虫

豊岡市日高町の山を歩いていて、地面に近い樹幹で大きなトウムシを発見した。でかい。真っ黒で、細長い。はじめてみるザトウムシだ。
オオナガザトウムシのオスであった。

しばらくすると、オスはいなくなって、ほぼ同じ場所にメスが現れた。メスの腹部は卵巣の卵が成熟していてかなり膨らんでいる。

オオナガザトウムシ。体長は約1cm、ザトウムシとしては大型であり歩脚が短めである。背中に棘を持っており、通常1本であるが、2~3本の個体もいる。この個体は2本ある。体が長く全身が黒い。ザトウムシに詳しい鳥取大学の鶴崎先生によると、オオナガザトウムシの雌雄は体形がかなり異なり、背中側から見たときに雄の方が肩がはって、長細い逆三角形に近い体形になり、これに対して雌は紡錘形であるということである。

日本、朝鮮半島、ロシア沿海州日本海沿いに分布しているが、体の大きさ、体形、オスの触肢の形態などに著しい地理的分化があるが、兵庫県内では本州型として安定している。

 ザトウムシという生き物は、われわれの生活にはまったくといっていいほど関係がない。ほとんど見向きもされない生き物のグループである。しかし山の中で注意すると、意外なほどに見つけることが出来る。なかなか繁栄している生き物ではないだろうか。


イラカザトウムシ


イラカザトウムシ(♂) 節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目カワザトウムシ科スベザトウムシ亜科
(Gagrellopsis nodulifera Sato & Suzuki)
甍座頭虫

神鍋高原の森林内でアリの観察をしていたらザトウムシが近づいてきた。先日ザトウムシのことを少し勉強したところなので、早速撮影を試みた。ヤマスベザトウムシではないかと思ったが、鳥取大学の鶴崎先生に写真を見ていただくとイラカザトウムシのオスであることが判明した。この種は背中に瓦を積み重ねたような模様があるのだが、オスは色が淡いのでヤマスベザトウムシと間違いやすい。しかし、5月に成体が観察されていることや標高からイラカザトウムシに間違いない。

イラカザトウムシは、兵庫県内だけで染色体数が2n=14,16,20.22,24と多様であることがわかっている。ザトウムシ類は移動能力が低く、地域的分化の目立つ仲間である。このイラカザトウムシは、鶴崎先生の研究資料を見ると2n=20か22の可能性が高い。
体長4~5mm程度。オレンジ色の体で背に瓦を積み重ねたような模様が特徴。メスは甍模様が黒褐色ではっきりしているがオスは淡い。幼体越冬で成体は5~7月ごろに見られる。森林生活者。ザトウムシ、魅力的な歩き方である。


ヒコナミザトウムシ


ヒコナミザトウムシ
 (ザトウムシ目、 マザトウムシ科 Nelima nigricoxa Sato & Suzuki)
ザトウムシは山の中で生活している。節足動物のクモ綱に属し、クモに似ているがクモのように頭胸部と腹部でくびれていない。複眼でもない。単眼が一対ある。座頭虫、めくらグモなどと呼ばれるがちゃんと眼はある。糸も吐かない。分類的にはダニに近いようである。

山の中を歩いていると、よくザトウムシを見かける。長い足で動体を浮かして、地面や樹上をゆっくり歩いている。私はこれまでザトウムシについてはほとんど調べたことが無いのであるが、里山で見かけるものは小さくて弱々しいものが多いように思う。昨年秋に標高の高いブナ・ミズナラ林で、やけにデカイザトウムシに出会った。これまで持っていたザトウムシのイメージとかなり違う。大きくてしっかりしているのだ。ネット等で調べてみて自分なりにオオナミザトウムシと同定したが、オオナミザトウムシは円山川以東にしか分布していないことが分かり、外見的にはほとんど識別困難なヒコナミザトウムシであるとの結論に至った。

胴体が大きい。1センチぐらいある。足が長い。足まで入れると手のひらぐらいになる。
SFの宇宙生物のようである。頭胸部から出ている、一対の単眼、4対の脚。山の中は小さな虫にとっては障害物だらけで、飛んだり、飛び跳ねたり、掻き分けたり、もぐったりして移動する、あるいはほとんど移動せずに生活するものが多い。しかし、ザトウムシは長い足で動体を持ち上げ、8本の足でゆっくりと歩いて移動する方法をとっている。

SF映画にこういう形態の生物とかロボットとか乗り物とかがよく出てくるように思う。独特なのである。
落ち葉などを食べているのかと思ったら、意外と動物食で昆虫の死体などを食べているようだ。あまり生態が研究されていないグループのようです。普通種。

写真:2011年11月 兎和野高原
*このブログに投稿時点ではオオナミザトウムシとしておりましたが、ザトウムシの研究者である鶴崎展巨先生のお話を聞く機会があり、ヒコナミザトウムシであることが分かりましたので、記述を修正しました。平成24年6月2日。


アリグモ

アリグモ (クモ目ハエトリグモ科Myrmarachne japonica)
蟻蜘蛛

 アリにそっくり。姿かたちも動き方もそっくり。ちょうどクロヤマアリという種に似ている。歩き回っているときはほとんど区別が付かない、というかアリに見える。
よく見ると足が4対ある。あごが大きい。昆虫は足が3対でクモ類は4対である。一番前の一対は顔の上に持ち上げて、アリの触覚のように見せる行動をとる。他の生き物に似せる形態や行動を擬態という。

 このアリグモについては、アリにそっくりになることで、どのようなメリットがあるのかよく分かっていないらしい。アリに自然に近づいてアリを捕食するためという説があったが、アリを捕食することは基本的にないということがわかり、アリに似せて身を守るということも効果があるのか疑問。
写真は我が家の庭でシャクヤクの葉っぱにいたもの。普通のアリもたくさん歩いている。アリグモは良く見かけるので、但馬では普通にいるのではないかと思う。顔を見るとアリでないことがよく分かる。すごい顔をしている。

アリグモに限らず、この擬態というやつ、どうすればこんなにそっくりに進化するのだろうか。葉っぱや枯れ枝とか周囲の環境に似せたやつ、他の強い生き物や毒のある生き物に似せたやつ。特別な意志に基づかず、単に偶然の積み重ねと淘汰の繰り返しで起こりえることとは、私などにはどうも納得しがたい。