コウノトリの紹介

コウノトリってどんな鳥?

コウノトリ
コウノトリ目 コウノトリ科 
英名:Oriental White Stork 
学名:ciconia boyciana
体長1.1メートル、体重4.5kg~5.5kg、両翼を広げると2mにもなる大型の鳥で、水田や湿地、河川などを好む水辺の鳥です。
日本では、乱獲や農薬などの影響で1971年に野生から姿を消しました。その後繁殖事業が進められ、2005年に豊岡市で試験放鳥が開始されました。野外での繁殖も順調に進み、2025年現在は、国内で約500羽の野生個体が生息しています。
野生絶滅と野生復帰についてはこちら

コウノトリQ&A

何を食べるの?

完全な肉食で、魚やカエル、バッタなどを食べます。かなりの大食漢で、成鳥は1日約500gの餌を食べます。

どんな声で鳴くの?

ヒナの時は「ピィー」とかすれた声で鳴きますが、成鳥になると声が出なくなります。成鳥は、声の代わりにくちばしをカスタネットのようにたたき合わせて音を出し、コミュニケーションをとります。これをクラッタリングと言います。

寿命は?

飼育下での平均寿命は、25~30年と言われています。野外ではまだ十分なデータがとれていませんが、現時点の最高齢は21歳です。

オスとメスの見分け方は?

オスの方が少し体が大きい傾向がありますが、オスもメスもほぼ同じ見た目です。

左:メス、右:オス
どこで暮らしているの?

本来は渡り鳥で、繁殖地のロシア東部(アムール川中流域)から、越冬地の中国東部(揚子江中流域)などの間を移動して暮らしています。日本や韓国などかつての生息地では、コウノトリの野生復帰も順調に進んでいます。個体数は世界で約1万羽と言われています。  
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どんな子育てをするの?

1~2月に巣のメンテナンスが始まり、3~4月に産卵します。1か月間、夫婦が交代で卵を温め、孵化したヒナは約2か月で巣立ちます。食べ盛りのヒナは毎日約1kgものエサを食べます。
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脚についているものは何?

脚には個体識別用の足環がついています。足環の色や書かれている番号から、個体番号や性別、生年月日などを知ることができます。
孵化から43日経ったヒナを捕まえ、足環を装着して巣に戻します。
国内のほぼすべての野外個体に足環がつけられています。

サギとの違いは?

よく田んぼで見間違えられるアオサギは、体全体がぼんやりとした灰色ですが、コウノトリははっきりとした白黒のツートンカラーです。また、サギは首をS字に曲げて飛びますが、コウノトリはまっすぐ伸ばして飛びます。

タンチョウとの違いは?

タンチョウとコウノトリは姿がよく似ており、昔は両方とも鶴と呼ばれていました。タンチョウは足の構造により木にはとまれないため、花札に描かれた「松に鶴」も、実際はコウノトリだと言われています。イラストのとおり、顔や翼先の色、鳴き声などで識別することができます。

赤ちゃんを運んでくるって本当?

本来はヨーロッパに生息するシュバシコウ(ヨーロッパコウノトリ)にまつわる言い伝えです。“むかしある夫婦が、屋根に巣をかけたシュバシコウを優しく見守ったところ、その夫婦も子宝に恵まれました”というお話から、赤ちゃんや幸せを運ぶ鳥として知られるようになりました(諸説あります)。

野生絶滅と野生復帰

主に繁殖地のロシアと越冬地の中国を行き来する渡り鳥ですが、かつては日本にもよく飛来していました。そのまま国内にとどまり繁殖する個体も多く、江戸時代(1868年以前)までは本州や四国、九州など全国的に生息していました。
しかし、明治時代の乱獲や、昭和以降の過剰な農薬使用、営巣木の伐採により、個体数は急激に減少していきました。

絶滅の要因

・乱獲

明治(1868年)以降、多くのコウノトリが乱獲されました。一部の地域では、「稲を踏み荒らす害鳥」という認識で銃による駆除も行われていました。

・農薬

有機水銀を含む強い農薬の使用により、カエルや魚などが減少し、十分なエサを得られなくなりました。また、コウノトリ自身も水銀中毒により繁殖能力を失っていきました。

・伐採

第二次世界大戦中に、松の木が大量に伐採され(油を取るため)、コウノトリの繁殖場所が失われていきました。

豊岡とコウノトリ

豊岡盆地には適した自然環境と、コウ ノトリを大切に扱う風潮があったため、国内最後の生息地として残りました。
1956年には国の特別天然記念物に指定され、市民と行政とが一体となって本格的な保護活動を行いました。
しかし、個体数の減少をくい止めることはできず、1965年には残った野外個体を捕獲し、人工飼育を開始しました。このとき野外の個体数は、既に12羽にまで減っていました。
人工飼育下で残った個体も、老齢化と近親交配による遺伝子の劣化、体内の残留農薬などにより、繁殖が成功することはありませんでした。

豊岡市 出石川(1960年)


1971年に、最後の野生個体が保護され、日本の空からコウノトリが姿を消しました。
1985年には、友好関係にあった旧ソ連(ロシア)のハバロフスク市から、6羽の若いコウノトリを譲り受けました。この中から2組がペアをつくり、1989年にようやく人工繁殖に成功しました。それ以後、毎年順調に繁殖が続き、2002年にはコウノトリ郷公園での飼育個体数が100羽を超えました。

2005年9月24日、コウノトリ野生復帰計画の最初の5羽が豊岡で野外放鳥されました。その後、野外コウノトリの自然繁殖は順調に進み、初放鳥から20年経った2025年には、500羽を超える野外コウノトリが全国を自由飛んでいます。繁殖地も九州から東関東にかけ、全国に広がりつつあります。
※コウノトリについての詳しい情報は、
兵庫県立コウノトリの郷公園のホームページをご覧ください

人工巣塔で子育て

本来の営巣木である松が戦争中の伐採で失われたため、野生復帰後の野外コウノトリは人工巣塔で繁殖をしています。コウノトリは基本的には一夫一妻制であり、ほとんどのペアが一生添い遂げます。子育ても夫婦で協力して行います。

1~2月頃:巣作り
巣のメンテナンスが始まります。直径1.5mほどの巣の外側には木の枝が使われ、卵やヒナが暮らす内側には枯れ草などが敷かれています。

3~4月頃:抱卵
3~4個の卵を1日おきに産みます。すべての卵を産み終えた後、夫婦が交代で1か月間卵を温めます。

5~7月頃:子育て
孵化直後のヒナは羽毛も十分には生えていないため、親鳥が抱いて温めます。2週間ほどたつと白い羽毛に加え、黒い風切り羽も生え始めます。

孵化後1か月がたつと、体もかなり大きくなります。この時期のヒナは1日につき1kgのエサを食べます。親鳥は飲み込んで集めたエサを巣で吐き出し、ヒナに与えます。

孵化後2か月がたつと、ヒナは巣立ちを迎えます。巣立ち直前には巣の上でジャンプして飛ぶ練習をします。巣立った後もしばらくは親鳥と共に行動し、夏が終わるころには親離れをします。

巣立った後も、しばらくは親からエサをもらいます