微妙な環境の希少種
ミゾコウジュ シソ科
私たちコウノトリ市民研究所の仕事の一つに豊岡盆地の生き物地図作りがある。1999年に最初のものを作り、以降毎年作ってきている。この3月に発行した生き物地図2006は、豊岡盆地の絶滅危惧植物を集めたもので、私が担当した。表面には絶滅危惧植物を生育地別に配置し、写真と短い解説が添えられている。裏面には、一覧表が載っている。コウノトリ文化館などで販売している。買っていただけると活動資金となるのでありがたい。
なんとか完成させたが、手持ちの写真がなく名前だけの植物がいくつか残っている。写真の中に文字だけというのはなかなか悔しいもので、実は、改訂版に向けて4月から名前だけの植物の写真を撮ろうとがんばっている。ミゾコウジュもそんな植物の一つだ。5~6月に毎週のように河原に通って、ミゾコウジュも写真におさめることができた。通い始めると気になり、つぼみが花になり、花が実をつけるところまで観察することができた。
国土交通省による河川水辺の国勢調査年鑑により、円山川のミゾコウジュの存在は十年程前から知っていた。年鑑には詳細は場所はなかったが、ミゾコウジュの生えている場所は予想できた。しかし、そこに行く機会はなかなかなかった。ミゾコウジュの花が咲くのは、5月の中頃。季節が悪い。この季節はどうしても目が山に行く。山の植物たちは毎週のように姿を変える。限られた時間の中であっちの山こっちの山と、行きたい場所、行かなければいけない場所がいくらでもある。川にまで手が回らなかった。
これではいけないと一昨年から一日二日と歩いていたが、見つけることができなかった。今から思うと場所と時期をわずかに間違えていたようだ。今年の観察でなかなか微妙な環境に生育することが分かった。これからも気にかけていきたいと思う。
2006.7.29掲載 菅村定昌