アオバズク
鎮守の杜は最後の聖域
アオバズク(フクロウ目フクロウ科)
高校生だった頃、青葉が茂る季節になると日が落ちた校舎の裏山からはアオバズクの「ホッホ・ホッツホ」という鳴き声が聞こえてきた。その声はフクロウの「ゴロスケ・ホッホ」に比べ、ずいぶん明るく軽やかなものだった。
アオバズクはハトより一回り小さいフクロウの仲間で、繁殖のために南から渡ってくる夏鳥。近年すっかり数を減らしてしまったのは、餌となる昆虫が少なくなってしまったのが原因といわれている。
アオバズク最後の聖域は鎮守の杜。ケヤキなどの古木にあいたウロに彼らは巣を作る。気に入った巣穴は何年も使われるから、繁殖の妨げになるようなことが起こらない限り、同じ場所で毎年彼らと出会うチャンスがある。
そのアオバズクの姿を神社杜で初めて見ることができた。アオバズクは昼間はお気に入りの枝に止まって眠っていることが多い。警戒心は強くなく、静かに観察する限り逃げ出すことがない。今回最初の出会いは、神社入口の常緑樹の枝の中。すでに鳥仲間二人が観察中のところだった。相手との距離は8m。黄色い大きな目をキッと見開いて、こちらの様子を常にうかがっている。
さすがに相手も根負けしたのか、やがて地上低く飛び出してからケヤキの高い枝に上がってしまった。飛んだときのアオバズクの翼は思った以上に長いもので、その飛翔姿は小型のタカと見間違えるほどだった。
高い枝から我々を見下ろすアオバズク。その表情はとても豊かで、スコープ越しの観察は見飽きることがない。ときにまん丸、ときにアーモンド型、ときに伏目にと、黄色い虹彩に大きな瞳の目が形を変える。古くからフクロウは知恵の象徴とされてきたが、アオバズクの目で睨まれると心の奥底まで覗かれてしまうような、そんな気分になってしまう。鎮守の森に似つかわしい鳥である。
文と写真 NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋 信
※2005/6/28(火)掲載