2012年09月 一覧

オオナガザトウムシ


オオナガザトウムシ 節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目カワザトウムシ科フシザトウムシ亜科
(Melanopa grandis Roewer)
大長座頭虫

豊岡市日高町の山を歩いていて、地面に近い樹幹で大きなトウムシを発見した。でかい。真っ黒で、細長い。はじめてみるザトウムシだ。
オオナガザトウムシのオスであった。

しばらくすると、オスはいなくなって、ほぼ同じ場所にメスが現れた。メスの腹部は卵巣の卵が成熟していてかなり膨らんでいる。

オオナガザトウムシ。体長は約1cm、ザトウムシとしては大型であり歩脚が短めである。背中に棘を持っており、通常1本であるが、2~3本の個体もいる。この個体は2本ある。体が長く全身が黒い。ザトウムシに詳しい鳥取大学の鶴崎先生によると、オオナガザトウムシの雌雄は体形がかなり異なり、背中側から見たときに雄の方が肩がはって、長細い逆三角形に近い体形になり、これに対して雌は紡錘形であるということである。

日本、朝鮮半島、ロシア沿海州日本海沿いに分布しているが、体の大きさ、体形、オスの触肢の形態などに著しい地理的分化があるが、兵庫県内では本州型として安定している。

 ザトウムシという生き物は、われわれの生活にはまったくといっていいほど関係がない。ほとんど見向きもされない生き物のグループである。しかし山の中で注意すると、意外なほどに見つけることが出来る。なかなか繁栄している生き物ではないだろうか。


田んぼの学校9月

秋のビオトープでゲンゴロウ・バッタ
9月16日(日)晴れ  参加 30名

今日は市内の小学校で運動会のところが多く、少ない参加人数を予想していましたが、そこそこの人数になりました。昨年はバッタ調査を実施しましたが、最近郷公園のバッタが少なくてあまり遊べません。原因はシカによる植生の単純化かもしれませんがわかりません。

今年はバッタを含めてビオトープの生物調査を行ないました。9月は新成虫が現れて、ビオトープのゲンゴロウの密度が高くなります。

調査結果
クロゲンゴロウとマルガタゲンゴロウがたくさんいました。ヒメガムシも多く、大型のガムシもいました。ヤンマ型ヤゴもたくさん見られました。バッタ類では、湿地のカサスゲ類にいるイナゴはハネナガイナゴ。とてもよく飛びます。コバネイナゴはよく跳ねます。
クロゲンゴロウ、マルガタゲンゴロウ、シマゲンゴロウ、コシマゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウ、ガムシ、ヒメガムシ、タイコウチ、オオコオイムシ、マツモムシ、コミズムシ、ヒル類、ヤンマ型ヤゴ、トンボ型ヤゴ、メダカ、ドジョウ、コバネイナゴ、ハネナガイナゴ、マダラバッタ、クルマバッタモドキなど。

コウノトリが高い空を旋回していました。このシーンが一番好きです。


生物多様性企画展開催中


県立コウノトリの郷公園内にある、豊岡市立コウノトリ文化館の玄関ホールにて、NPO法人コウノトリ市民研究所による企画展が開催中です。
◆統一テーマ 「コウノトリが暮らす 豊岡盆地とその周辺の生物多様性」
◆第1回展示テーマ 「森の蝶・ゼフィルス」 写真・文:友田達也主任研究員 
◆第1回展示期間 2012年9月11日(火)~10月8日(月)
◆展示内容(案内文より抜粋)
 豊岡盆地の周辺部から、但馬の山地帯にかけて、日本のゼフィルス25種中の20種が生息しています。但馬の豊かな生物多様性を示す一例といえるでしょう。その中から今回17種を紹介します。
今後、コウノトリ市民研究所の研究員が様々な生きものを順次紹介することになっています。どうぞ御期待ください。


ダイリフキバッタ


ダイリフキバッタ バッタ目バッタ科
(Callopodisma dairisama )
内裏蕗飛蝗

フキバッタというバッタの仲間がいる。特徴的なバッタである。翅(はね)が小さく退化しているため、飛び跳ねることは出来るが、飛翔力がない。つまり移動能力に乏しい。そのため各地域で分化が進んでいると考えられる。
多くのバッタ類の食草は単子葉(イネ科、グラス類など)であるが、フキバッタは双子葉植物である。つまりフキフキバッタの「フキ」は「蕗」が由来である。フキ以外の双子葉も多くが食草になっている。

今回報告する「ダイリフキバッタ」は、フキバッタ類の中でもユニークなものである。
長野県から岡山県に分布するようであるが、極めて局地的である。明るく開けた人為的な中規模攪乱環境に棲息する希少種である。他のフキバッタ類と比較し、陽当たりの良い場所を好む。成虫は夏季に見られる。一属一種。
人為的な中規模攪乱地域というのは、定期的に野焼きをするとか草刈を行うなど、人間の営みが生態系の一員として機能していた状態があって維持されるもので、残念ながら、人間の自然界の中での営みが極端に少なくなってしまった現在では、非常に稀な環境といえる。そのため、里山や里地、そこを中心に生活している生き物の多くが絶滅の危機に瀕している。ダイリフキバッタもそのひとつである。

但馬地域におけるフキバッタ類については、あまり調査がされておらずよく分かっていない。コウノトリ市民研究所の上田代表の所有する標本には、数点のダイリフキバッタが確認されているが、かなり以前のもので、現在でも棲息しているかははっきりしていなかった。この5月に、鳥取県立博物館の川上靖先生から、存在の可能性の高い地域を紹介いただく機会に恵まれ、その場所の詳細な調査したところ、あらためてダイリフキバッタの生息を確認した。
ダイリフキバッタは特徴的なので、同定は比較的簡単である。
成虫であれば、翅だけで簡単に同定できる。「背中側で翅が明確に離れている」。ダイリフキバッタの翅は、体の側面に小さく生えているだけで、背中側から見ると翅が明確に離れており、背中が丸出しである。兵庫県内においてこの特徴を持つものはダイリフキバッタだけである。

また、幼虫については、「背中に黒い筋が2本走る、というよりは黄緑色の1本の筋が走る」ということで見分けられる。これは非常に特徴的な色彩である。

ダイリフキバッタは、他のバッタに比べて飛翔力が乏しいので草むらの中では見つけにくい。しかし、一度見つける観察や撮影は容易である。あまり積極的に逃げようとせず、強く刺激しなければ、葉の裏に回り込んで隠れようとする程度である。

 余談であるが、和名の「ダイリフキバッタ」の由来は学名dairisamaから来ていると考えられる。学名はScudderという人が記載している。1895年 にScudderがどういう理由で「dairisama」と命名したかは分かっていない。川上先生によると、「本種は、日本固有種で、Scudderは、日本にいる種として記載しているので、天皇(=内裏様)を現地語の読みで命名した可能性は十分に考えられると思います。また、dairisama はラテン語の表記としてもおかしいので現地語の表記であると思われます。」とのことである。当時の日本を外国人から見た場合、天皇陛下の存在は非常に興味深いものであったろうし、あるいは雛人形などから内裏様を連想したかもしれない。ダイリフキバッタの特徴的外貌からこれらを連想させるものがあるのかもしれない。
いずれにせよダイリフキバッタは偉大である。少なくとも兵庫県RDBには記載すべき種であろう。大阪府や鳥取県では記載されている。