2005年04月 一覧

コシアブラ


コシアブラという山菜、タラノメよりもおいしいと本には書いておる。
ずっと食べてみたかったが、よく分からない。春先の採りごろというのは1週間もないし、なかなか図鑑や写真だけで採集して食べるというのはできない。その時期に運良くコシアブラを知っている人と山に行ってめぐり合うというのも至難の業である。
そんなわけで、コシアブラなる山菜がとてもおいしいらしいと知ってから6年が経過した。その間知り合いからは、コシアブラはおいしいよ、とか、山にたくさん生えているよ、とか聞くけれど、実際に食するまでには至らない。
今年4月17日、市民参加の森づくり事業で白雲山に登った。森林インストラクターのNさんに、ぜひコシアブラを教えてほしいと前もってお願いしておいた。当日はあいにくまだ時期が早く、タラノメは採りごろであったがコシアブラはまだ芽が固い状態。しかし森林林業課のSさんが、それを採ってきて僕に教えてくれた。どこにでもあるような芽である。とてもこれでコシアブラを見分けられるようになる自信はなかったので、匂いだけはしっかり覚えておこうと手で揉んでしっかり嗅いでおいた。その匂いも良くある木の芽の匂いのような気がする。

白雲山を降りた後で、今度は一人で愛宕山へ行った。そこで偶然にも先ほど教えてもらったのに良く似た芽に出くわした。台風23号のために木が倒れて山道をふさいでいるのだ。だから通常手の届かない大木の新芽が手に届く場所にある。匂いも良く似ている。

1週間後、コシアブラであることを確認しに行ったのであるが、今度はどんぴしゃの採りごろで、山菜図鑑の写真とそっくりである。さすがに間違いようがない。
こうして僕は、念願のコシアブラを手に入れたのである。
味は濃厚でこくがある。タラノメと同じウコギ科であるがタラノメよりも味が濃い。つまり野趣が強いというか、癖が強い。シュンギクに近いものがある。
タラノメよりもおいしいというのはうそではないと思う。てんぷらがいいと書いてあるが、茹でてマヨネーズやドレッシングであえて食するほうがうまい。
台風で倒れて採りやすい状態というのはめったに巡り会えないことである。4月下旬の1週間ほどの期間、毎年食することができるだろうか。


コチドリ

「コチドリ踊り」の春

コチドリ(Little Ringed Plover) チドリ目チドリ科 Charadrius dubius curonicus
 コチドリは夏鳥で、3月も終わりに近づくといち早く豊岡盆地に戻ってくる。渡って来たときにはすでに「つがい」が形成されており、すぐにも繁殖活動を始める。
 コチドリが繁殖地として選ぶのは、丸石河原や農地の砂利道とかである。彼らは地面に直接巣を作る。樹上に巣を掛ける鳥のように、植物などを使って巣を編むということはしない。直径10センチほどの円形のくぼみを地面に作り、産座には細かい砂利が敷いてあるだけの粗末な巣である。
 繁殖期に日ごと繰り返されるコチドリの行動は非常におもしろい。オスは地面に胸をこすりつけ、尾羽を高く上げる。ビュルビュルと小さく鳴きながら、扇状に広げた尾羽を左右に振る。メスの気を引くためのこの求愛ディスプレイは、場所を変えながらメスの気持ちが高まるまで何度も繰り返される。
 やがてメスがその気になったとき、いよいよ「コチドリ踊り」が始まるのであるが、これがなかなか美しく情熱的なのだ。高まったメスはオスが最後にディスプレイしたくぼみに体を入れ、静かにそのときを待つ。メスに気に入られたオスはもう嬉しくてたまらない。片方の翼を広げ、それを傘のようにメスの上におおい被せながら、ビュルビュルと鳴いてメスの周りを踊るように歩くのである。
 さて「コチドリ踊り」の後は感極まって交尾にいたるわけだが、メスはすぐに4個の小さな卵を産む。オス・メス交替で抱卵し、20日ちょっとでヒナが孵る。もっとも、ヒナが孵るまでに巣が破壊されたり、卵を天敵に食べられたり、彼らの繁殖には大きなリスクがつきものだ。
 写真のペアがかつて営巣した農地は、大規模な圃場整備を受けた。ここでの繁殖はしばらく無理だろうが、そんなことは野生の世界では「想定内」。今日もどこかで「コチドリ踊り」が繰り返され、人知れず新しい命が生まれてゆくのである。
(文と写真:NPO法人コウノトリ市民研究所・高橋信)
※2005/4/26掲載


野上ビオトープ05,04,21

 
 野上のビオトープ、今年水を張って3年目。
 昨年の台風23号でかなり土砂が入ってしまった。

 アカガエルのオタマが育っている。目視でミナミヌマエビも見える。ドジョウの密度も上がっている(たぶん)。

 横の山の松の木に、ハチゴロウが巣をかけた。これまでは増殖上のケージの屋根に巣をかけていたが、今年初めて松ノ木に巣を作り、約40年ぶりのことである。

 ハチゴロウをじっくり観察する機会に恵まれた。この時期彼はまだ巣をしっかり守っている。目の前のビオトープに餌も豊富なので、遠出はしない。11時から4時の間、2回ビオトープに降りて、30分ほど採餌する。よく見えないが、ドジョウ、オタマを食しているものと思う。


カタクリ


希少な植物の自生地は公言されないことが多い。ましてやそれが可憐な花をつけるとなればなおさらである。ラン科の植物は野生植物の中で最も不運な存在で、場所が知られるとあっというまに盗掘されて自然界から姿を消してしまう。野の花を掘り取って自宅の庭なり鉢なりに育てて楽しむ人の気持ちは分からなくもないが、野の花は野にあってこそ美しいとは思わないか。
カタクリは里山の代表的な植物で、かつてはどこにでもあった。その根からとった良質な澱粉が片栗粉であるが、今では片栗の名前だけ残って粉は馬鈴薯から作られる。めっきり自生地が減少してしまったカタクリは、もっぱら山野草ファンの花鑑賞の対象となっている。
但馬の代表的なカタクリ自生地として知られる三川山(標高888m)にも、花期になると人が集まる。ただし大規模な自生地は標高500mの中腹に位置し、そこに到るには厳しい山道を辿らねばならないので、ここのカタクリは山歩きを趣味にする人たちにもっぱら愛されている。自生地はまったくの自然の状態であり、常に自然の撹乱を受けつづけている。それは雪崩であったり、山崩れであったり、毎年少しずつ地形を変えながら、そのたびに押し流された土砂がカタクリの植生分布を広げてきた。
数年前、ここで大規模な盗掘事件があったという。素人レベルの仕事ではなく、業者が商売のためにカタクリの株をごっそり持って帰ったという噂だった。かなり深刻な状況として話が伝わってきたので心配したが、翌年には何事もなかったかのように沢山の花を咲かせて安心した。
カタクリの花は、うつむきかげんの薄桃色の花弁のしおらしさと、剥き出しのシベの生々しさと、そのアンバランスが同居した美しさが魅力だ。カタクリは森の眠りを呼び覚まし、その短い花の時期を虫たちに捧げて実をつける。その実が土に落ちて花を咲かせるまで7年かかるという。そう思えば、この花の愛しさもまた募るというものだ。
ユリ科カタクリ属 多年草 Erythronium japonicum
撮影:2005/4/16 三川山


ノビタキ通過中


4月3日の初認から2週間が経った。河川敷から田んぼまで、まだノビタキの姿がよく見られる。しかし、この週末の群を見ると、メスの占める割合が多い気がする。ノビタキの春の渡りの後半になると、毎年同じことを思う。オスがまず先に繁殖地に向かい、メスの到着を待つ。そんな気がしてならないのだ。写真はノビタキ♀。
撮影:2005/4/17 豊岡市野上


オオヘビガイ

サザエにまさる“禁断”の味
オオヘビガイ
オオヘビガイ(盤足目ムカデガイ科)
 磯に行くとヘビがとぐろを巻いたように、あるいはうねうねと這うように、貝殻のようなものが岩にくっついている。オオヘビガイという巻貝の一種であるが、パイプ状の貝殻は螺旋を描くなど規則性が無く、種としての一定の形を持たない。潮間帯の岩に固着して生活し、潮が満ちるとクモが網を張るように粘液糸を水中に出して、それに付着したプランクトンを食べている。変な生き物である。
 ある本にこの貝が非常に美味で、カキよりも濃い味と書いてある。ずっと気になっていたが、ようやく挑戦する機会に恵まれた。
 岩にしっかりとへばりついているので、手では取れない。本体と岩の間にドライバーなどを合わせてたたいてやると、意外と簡単に脱落する。貝殻を破壊して身を引きずり出し海水で洗って刺身で食してみる。予想以上に美味である。
 僕はもともと貝類は好きなほうであるが、この貝については格別と言って良い。うまく言い表せないが、バイガイとサザエの中間みたいな味で、さらに旨味が濃いのである。肉の部分はこりこり、しゃきしゃきと良好である。肝の部分はアワビ、サザエのそれに近く、ねっとりと濃厚で苦味や生臭さはない。おそらくいろいろな貝類の中でもかなりの上位に位置するであろう。刺身もいいが茹でもすばらしく、甘く深い味である。
 しかし、ツブ、ニシなどと呼ばれる岩場の小型巻貝類と比べ、ほとんど食用の対象とされていない。採集には道具が必要で面倒で、大きさもアワビ、サザエとは比較にならないほど小さく、量を確保するのは大変である。さらに残念なことに潮の干満の差が小さい但馬の海では、生息場所が限られている。だからむやみに食べてはいけない。
 写真は外見と、身を取り出したところ。
NPO法人 コウノトリ市民研究所
主任研究員 稲葉一明
05,4,11掲載


サンインネコノメ


自分のBlogにも情報を載せたが、こちらでも情報提供してこの植物の認知を広めようと思う。
写真は日高町阿瀬渓谷で撮影したサンインネコノメ。今までホクリクネコノメと認識していた種である。専門家の調査でホクリクネコノメの品種のひとつとして1995年にサンインネコノメの和名で新種登録された。
学名はChrysosplenium fauriae Franch f.ferruginiflorum Wakab.et H.Ohba、関宮町大久保のタイプ標本がここに収録されている。
写真で示すとおり、萼(がく)裂片の色が薄茶色であることが、この部分が薄緑色のホクリクネコノメとの識別ポイントとなる。サンインネコノメの分布がどこまで広がっているのか気になるところである。今後山を歩くことがあれば、湿地でサンインネコノメを探してみて欲しい。

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ノビタキ初認


ノビタキ (Stonechat) スズメ目ツグミ科 Saxicola torquata stejnegeri
2000/4/8
2001/4/8
2002/4/6
2003/4/6
2004/4/4
2005/4/3
ここ6年間の私のノビタキ初認日のリストである。週末観察という制限があるので、実際の初飛来日とは最大一週間のズレが生じる可能性はあるが、こうして並べてみるだけでノビタキの渡りが実に精度よく繰り返されていることがわかる。
私は「4月6日はノビタキの日」と勝手に決めているのだが、上記の記録を見ても4月6日±2日の範囲で(今年は1日早いが)初認日が一致する。初認は1羽とか2羽とかを円山川河川敷で見るに過ぎないが、初認から1週間経つと一気にノビタキの数が増え、田んぼの水路沿いの草や杭の上でよく見られる。ここでの春の観察期間は2週間。彼らは急かされるように北に向かい、そこで繁殖活動を始めるのだ。豊岡盆地は彼らの通過地点。再び会えるのは9月中旬以降の南への渡り時期。つまりこのノビタキ、豊岡盆地の「春告げ鳥」であり、「秋告げ鳥」なのである。
写真:2005/4/3 豊岡市野上堤外


ヒオドシチョウ


タテハチョウ科のチョウは成虫で越冬するものが多い。春先の野山で美しいタテハチョウに出会うのは嬉しい。日高町の阿瀬渓谷でヒオドシチョウに出会った。
道に転がっていたイノシシの骨だけの死骸の側の足だけの部分に、このヒオドシチョウが止まって死汁を吸っていた。花の季節には少し早い山。チョウも動物の死骸に寄ってくるのを知って意外だった。
その写真を撮ろうと近寄ったらあっという間に逃げられてしまった。しばらく待って戻ってきたけど、警戒されて死肉には止まってくれなかった。


センボンイチメガサ

センボンイチメガサ
2004.10.2 豊岡市目坂
センボンイチメガサ ハラタケ目 モエギタケ科 センボンイチメガサ属
Kuehneromyces mutabilis (Schaeff.:Fr.) Sing.et A.H.Smith
千本市女笠
ホームページの新装に際し、但馬のキノコも新たなステージに変身しようと思う。
 まず、学名を記す。しかし僕には学名そのものが良く分かっていない。とりあえず図鑑に書いてあるとおり記す。
 つぎに、僕には同定不能のものについてもあげていくことにする。可能であれば、諸先生方のコメントをいただき、検討したい。
 また、4月1日付で、「但馬幼菌の会」を発足した。会員は、僕と、豊岡市日高町の但馬変人クラブ所属のF氏の二人である。幼菌の会のH先生のコメントを期待して「但馬幼菌の会」と命名した。
 F氏については、但馬変人クラブホームページで但馬のキノコについての情報を順次取り上げられていくことと思う。本会の活動により、今後但馬のキノコ相の解明が進むことを期待している。
  http://tajihenclb.web.infoseek.co.jp/index.html

 さて、新但馬のキノコの第一番目は、センボンイチメガサである。広葉樹または針葉樹の切り株などに束生、群生する傘の径3~6センチ程度のキノコである。食用キノコであるが、どの図鑑を見ても猛毒のコレラタケ(ドクアジロガサ)に似ているので要注意と書いてある。つばが明瞭でささくれもあるのでセンボンイチメガサに違いないと思うが、なかなか食べる勇気は無い。
 趣のある和名である。
 千本:たくさん群生する様を表す。
 市女笠:かぶり笠の一。菅(すげ)などで編み、中央に高く巾子形(こじがた)という突起を作った笠。市女が使用したのでこの名を生じたが、平安中期ごろには上流の女性の外出用となり、男子も雨天のときなどに用いた。
 市女:市で物を商う女
センボンイチメガサ2


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