コシアブラ


コシアブラという山菜、タラノメよりもおいしいと本には書いておる。
ずっと食べてみたかったが、よく分からない。春先の採りごろというのは1週間もないし、なかなか図鑑や写真だけで採集して食べるというのはできない。その時期に運良くコシアブラを知っている人と山に行ってめぐり合うというのも至難の業である。
そんなわけで、コシアブラなる山菜がとてもおいしいらしいと知ってから6年が経過した。その間知り合いからは、コシアブラはおいしいよ、とか、山にたくさん生えているよ、とか聞くけれど、実際に食するまでには至らない。
今年4月17日、市民参加の森づくり事業で白雲山に登った。森林インストラクターのNさんに、ぜひコシアブラを教えてほしいと前もってお願いしておいた。当日はあいにくまだ時期が早く、タラノメは採りごろであったがコシアブラはまだ芽が固い状態。しかし森林林業課のSさんが、それを採ってきて僕に教えてくれた。どこにでもあるような芽である。とてもこれでコシアブラを見分けられるようになる自信はなかったので、匂いだけはしっかり覚えておこうと手で揉んでしっかり嗅いでおいた。その匂いも良くある木の芽の匂いのような気がする。

白雲山を降りた後で、今度は一人で愛宕山へ行った。そこで偶然にも先ほど教えてもらったのに良く似た芽に出くわした。台風23号のために木が倒れて山道をふさいでいるのだ。だから通常手の届かない大木の新芽が手に届く場所にある。匂いも良く似ている。

1週間後、コシアブラであることを確認しに行ったのであるが、今度はどんぴしゃの採りごろで、山菜図鑑の写真とそっくりである。さすがに間違いようがない。
こうして僕は、念願のコシアブラを手に入れたのである。
味は濃厚でこくがある。タラノメと同じウコギ科であるがタラノメよりも味が濃い。つまり野趣が強いというか、癖が強い。シュンギクに近いものがある。
タラノメよりもおいしいというのはうそではないと思う。てんぷらがいいと書いてあるが、茹でてマヨネーズやドレッシングであえて食するほうがうまい。
台風で倒れて採りやすい状態というのはめったに巡り会えないことである。4月下旬の1週間ほどの期間、毎年食することができるだろうか。