クロイトトンボ


愛の水中蜻蛉
クロイトトンボ(均翅亜目イトトンボ科)
 トンボの産卵の仕方はいろいろな種類がある。飛びながら産むのか、どこに産み付けるのか、水面を叩くように産むのか、オスとメスが連結して産むか・・・・、細かく分けると、幾通りになるのだろうか。
 5月~6月豊岡市野上のコウノトリ増殖センター前にある田んぼビオトープではクロイトトンボの産卵が普通に見られる。こいつらの産卵の仕方には驚いてしまった。オスとメスが連結しながら水面を飛び交っているのだが、水面に止まったかと思うと、メスがお尻を水中に突っ込んで水草に卵を産み付ける。これは驚くことではない。メスは一所懸命で、どんどん深くお尻を水中に突っ込んでいき、首まで水に使ってしまった。えらい深くまで水に入るものだと見ていたら、とうとうオスのお尻を引きずり込むように頭まで水の中に入ってしまった。
 興に乗ってきたのか、卵を産みつけながらどんどん水の中に深く入っていく。オスも引きずられて行くように水に浸かっていき、かろうじて頭だけを水面から出している、と、驚いたことにオスも完全に潜ってしまった。
 クロイトトンボのメスとオスとが連結しながら、完全に水中に潜って水草に卵を産み付けているのだ。これを「潜水産卵」という。さらに詳しく書くと、「植物組織内連結静止潜水産卵」と書くべきかも知れない。
 完全に水没してから約5分後、2匹はつながりながら這い出てきて、何事もなかったように飛び立った。でも考えてみると、こいつらヤゴのときは完全に水中生活で、一生の間では水の中のほうが長いのだ。トンボというのは空を飛ぶ生き物というイメージが強いが、どちらかというと水の中の生き物なのかもしれない。
 完全に潜水した状態だと良く分からないので、途中の写真をつけておきます。
NPO法人 コウノトリ市民研究所
主任研究員 稲葉一明
2005,6,19掲載