ニホンザル


 人間と同じ霊長類であるニホンザル。但馬にはニホンザルの群(むれ)が二つある。一つは美方郡加美町小代区を中心に活動しているもの、もう一つは豊岡市城崎町を中心としているものである。以前はもっと沢山の群があるように思われていたが、最近の調査で但馬には二つだけであることが分かった。もっとも、母系を中心としたこれらの群のほかに、群を出たオスで離れザルと呼ばれるもの達もいる。
 さて、但馬のサルは悪い。行動範囲にある各集落を巡回し、農作物を荒らしながら生活をしている。サルは本来奥山で生活しているものであるが、過疎化や高齢化のために農地や集落を人間が制圧できなくなって来ている。人間によって追い払われる危険のなくなった人里は、農作物など食べ物が豊富で大変生活しやすい場所となってしまっている。
 先日、豊岡市城崎町のある集落に行ってみると、墓地の周辺にニホンザルが20頭ほど出て来ていた。久しぶりの晴天で、サルたちは日向ぼっこをしたり、毛づくろい(グルーミング)をしたりしてくつろいでいる。大人も子供も仲良く遊んでいる。なかなか微笑ましい光景である。しかし、そのうちに植えてある柚子をおいしそうに食べ始めた。よく見ると、沢山食い散らかした跡がある。車庫の上や人家の屋根に上るものまでいる。まったく我が物顔である。畑は雪の下に埋まっているため農作物を荒らすところは見られなかったが、サルの被害のためにまともには作ることができないらしい。
サルの撃退法は、追い払いにより居心地を悪くすることで人里への執着をなくし、奥山に帰らせることだそうだ。人間が何もせずに受け入れていると、どんどんエスカレートして悪いサルになって行く。城崎のサルは僕が20mほどの距離で見ていても平気である。厳しい追い払いを受けていないのか、人をまったく恐れていない。
 兵庫県下のニホンザルの群れは10を超えていない。害獣であるが希少種でもある。
NPO法人 コウノトリ市民研究所
主任研究員 稲葉一明
2月12日掲載