タマキクラゲ


タマキクラゲ  赤褐色の山のゼリー
膠質菌類 キクラゲ目 ヒメキクラゲ科 ヒメキクラゲ属
 梅雨の時期に里山を歩く。雨上がりの山の中は蒸し暑く、すでに蚊も出ているので蚊取り線香を焚いて行く。たくさんのキノコが出ていることもあるし、まったく見られないこともある。
 枯れ木の枝に、3cmほどの円くてみずみずしいゼリー状の物体が列を成すように盛大に発生している。キクラゲの仲間である。
図鑑で調べてみるとタマキクラゲであった。黄褐色から赤褐色のキノコで、乾燥すると収縮して薄い膜状になるが、水を含むとゼラチン質の座布団状から球状に膨らむ。キクラゲの仲間には、隣のものとくっ付くと癒着融合してしまうものがあるが、タマキクラゲは独立したままである。
キノコの表面に、赤い小さなつぶがくっ付いている。良く見るとじわじわと移動しているので、小さな虫であることがわかった。シラミの仲間かなと思っていたのであるが、あとで写真を仲間に見てもらうと、土壌動物でイボトビムシの仲間であろうと教えてくれた。さらによく見ると、キノコのゼラチン状の本体の中に、昆虫の幼虫らしきものがもぐり込んでいた。こちらはキノコバエであろうか。いろいろな生き物がつながって生活している。
 このキノコ、かすかに心地よいキノコ臭を放っており、プリンプリンして美味しそうである。キクラゲの仲間に毒は報告されていないはずなので、さっと湯をくぐらせてポン酢で食してみたが、中華料理に使われるキクラゲのようなこりこりとした食感はなく、柔らかくねっとりとした感じで、どちらかというと美味しいというものではなかった。ゼリーとして黒糖蜜をかけて食べると美味しいという情報もあったが、残念ながらあとから聞いた話であった。
 
NPO法人 コウノトリ市民研究所
主任研究員 稲葉一明
06.06.25掲載