コハクチョウ

冬季湛水田が鳥を呼ぶ

コハクチョウ(カモ目カモ科)
 コウノトリ野生復帰の受け皿として、豊岡盆地の田んぼが果す役割は大きい。冬の田んぼに水を張る「冬季湛水田」はコウノトリの餌場確保という名目と共に、田んぼの自然環境回復に大きな効果が期されている。
 晩秋の豊岡盆地上空は、西の越冬地に向かうコハクチョウやマガンの移動ルートにあたる。毎年、休憩のために地上に降りる少数を観察するが、冬季湛水が本格化した今年の状況は明らかな変化あった。この2種の地上での観察数が格段に増えたのである。
 特にコハクチョウは、明らかに湛水田目当てに舞い降りており、今までは円山川に浮かぶ少数を観していた事情と大きく異なる。
 私自身、国府平野の湛水田では2度に渡り延べ4羽のコハクチョウを観察したし、六方田んぼの湛水田では一度に14羽のコハクチョウが羽を休めた報告もあった。
 大寒波が襲った先月中旬、六方田んぼ上空を南西に飛び去るコハクチョウの群れを見上げた。その数およそ20羽。渡りの時期としては遅いが、鳥たちはまだ動いていることを実感させられた。
 方向から見てきっと国府平野の湛水田に降りただろうと思った。吹雪の中、現地に行ってみると予想通りだった。3度目の観察となる今回の群れは22羽で、色の黒い幼鳥が7羽混じっていた。
 居眠りするもの、羽繕いするもの、シャーベット状の水にくちばしを入れて落穂を食べるもの、それぞれがひとときの旅の疲れを癒している。やがて一斉に飛び立ち、コォーコォーと鳴き交わしながら雪空を旋回した後、北方向に姿を消した。
 コウノトリが空を舞う風景は特別美しい。水を張った田んぼにコハクチョウがいる風景もまた良い。コウノトリをきっかけに、たくさんの鳥たちが集まってくる豊岡盆地であればよいと願っている。
(文と写真 コウノトリ市民研究所 高橋 信)
※2006/1/21(土)掲載